☆ 目的 ☆
民法が施行され、すでに100年を経過していますが、民法は基本的に、売主も買主も契約当事者は全て対等な関係であることを前提としています。
ところが現代の社会では売主である事業者と、買主である消費者との間には、情報の質や量、交渉力、資金力等に大きな格差が存在しています。
このため、事業者と消費者との間で結ばれる契約は、専門的知識を持たない消費者が不利になりやすく、トラブルが発生した場合には消費者が一方的に不利益を被ることが多くなってきました。
そこで、事業者と消費者との間に情報の質や量、交渉力の格差があることを認めたうえで、「消費者の利益の擁護を図ること」を目的として「消費者契約法」が制定され、2001年4月1日から施行されています。
この法律は、消費者と事業者とが対等に契約できるようにするため、両者の間にある格差を埋めるためのルールであると言えます。
☆ 定義 ☆
「消費者」とは、個人のことを言います。 「事業者」とは、[1] 法人その他の団体、 [2] 事業として又は事業のために契約を行う個人のことを言います。 「消費者契約」とは、消費者と事業者との間で締結される契約のことを言います。
☆ 努力義務 ☆
事業者には、消費者契約の内容が消費者にとってわかりやすいものになるように配慮することと、勧誘に際しては契約の内容についての必要な情報を消費者に提供するよう努めることが規定されています。消費者には、消費者契約の内容について理解するよう努めることが規定されています。
☆ 不適切な勧誘による契約の取消 ☆
不適切な勧誘によって消費者が「誤認」したり、「困惑」して契約した場合は「取消し」ができます。取消しができるのは、誤認に気がついた時、又は困惑状態から脱した時から6ヶ月間、契約したときから5年以内です。
1.「誤認」
[1] 不実告知 : 重要な事項について事実と異なることを告げること。
・例えば、業者から、事故車ではないことを口頭で確認し、それを事実だと思って中古車を購入したが後日事故車であることが分かったような場合が該当します。
[2] 断定的判断の提供 :
将来の変動が不確実なことについて断定的な判断を提供すること。 ・例えば、10年後には確実に利益が出ると言われてそれを信じ、銀行から借り入れをして一時払いの終身保険に加入したが、予定通りの配当が出なくなり、銀行に支払う利息の方が高くなってしまったような場合が該当します。
[3] 不利益事実の不告知 :
重要な事項について、消費者の利益になることだけ告げ、不利益になることを故意に告げないこと。 ・例えば、中古マンションについて、業者が隣接地に建設計画があることを知っていたにもかかわらず、「眺望・日当たり良好」との説明をし、それを信じて買ったら半年後には隣に建物ができ、眺望・日照がほとんど得られなくなってしまったような場合が該当します。
2.「困惑」
[1] 不退去 :
消費者の住居又は業務を行っている場所から、事業者に退去してほしいと言ったり意思を示したにもかかわらず退去しないこと。 ・例えば、訪問販売で整水器を勧められ、何度も断ったのに長時間居座り、なかなか帰らないので仕方なく契約したような場合が該当します。
[2] 監禁 :
事業者が勧誘をしている場所から、消費者が退去したいとの意思表示をしたにもかかわらず退去させないこと。 ・例えば、キャッチセールスで営業所に連れて行かれ、長時間絵画の購入を勧められた。帰りたいといっても帰してくれず、帰るために仕方なく契約書にサインしたような場合が該当します。
☆ 不当な契約条項の無効 ☆
消費者に一方的に不利益となる契約条項は、全部又は一部が「無効」になります。
[1] 事業者の損害賠償責任を免除したり制限する条項 ・例えば、「いかなる理由があっても、一切損害賠償責任を負わない。」という条項は、事業者の損害賠償責任の全部を免除する条項になります。 ・「いかなる理由があっても事業者の損害賠償責任は○○円を限度とする。」という条項は、事業者の損害賠償責任を制限する条項になります。
[2] 不当に高額な解約損料を定める条項 ・例えば、結婚式場を予約し、1年前にキャンセルしようとしたら「解約料は80%」との条項があり契約金100万円の80%である80万円の請求を受けたというケース。この場合、事業者が受ける平均的な損害額を超える部分について無効になります。
[3] 不当に高額な遅延損害金を定める条項 ・例えば、毎月20日に支払うことになっている駐車場代金の支払いが10日遅れ、「遅延料は1日1,000円」との条項があるため10,000円の請求を受けたというケース。遅延損害金は年14.6%を上限とすることが定められていますので、この場合、その額を超える部分について無効となります。
[4] 消費者の利益を一方的に害する条項 ・例えば、「契約の解除はいかなる理由があってもできません。」という条項は、民法で定められている信義誠実の原則に反して消費者の利益を一方的に害することになり、無効となります。
☆ 他の法律との関係 ☆
[1] この法律に定めがない事項については、民法及び商法の規定が適用されます。
[2] この法律の規定と、民法商法以外の他の法律の規定とが抵触する場合には、 原則として後者の規定が適用されます。
[3] この法律の規定は、労働契約については適用されません。
(以上、愛知県県民生活プラザ『トラブル解決のために必要な法律の基礎知識』より抜粋)http://www.pref.aichi.jp/
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